(工房からの近況をお届けします。)
スランプの時、なぜか私は安普請の我が家の内装を改良したくなります。
意を決して、住居の汚れてきた内壁の塗り替え、そしてずっと作ろうと思っていた正方形が基本ユニットの本棚、に取り組みました。
生活しながらの壁塗りは、養生の準備が手間がかかりパテの研磨の粉が舞い、とても落ち着かないのですが、完成時をひたすら楽しみにぐっと我慢して仕事します。
本棚は、はやる気持ちを抑えてできるだけ精確に加工して、艶消しの水性塗料を2回塗りました。
サイズが大きいので、狭い工房の中で四苦八苦して加工しました。工房で加工し塗装したばらばらの部材を、二階の住居で組み合わせて全体がしっかりする構造です。
出来上がって好きな本を入れる時、なんとも嬉しかったことでした。
同時に、今の自分にはもう不要になった茶色に変色した本に流れた長い年月を感じ、若い頃、心の支えになってくれた本たちとの別れもありました。
完成した夜は本棚を眺めながらウィスキーを飲みました。
車庫兼材料庫の、ベニアにペンキの壁(庭側)が長年の風雨で腐食してボロボロになっていたので、トタンに張り替えました。
腐っていた間柱や横桟を新しくして、ホームセンターで購入したトタン角波板を張りました。
トタンの壁張りは経験がなかったので躊躇していたのですが、友人の大工さんのアドバイスやウェブのおかげで予想以上に早くできました。
でも今回も感じたのは、取り掛かる前の、自身の心の「壁」でした。
年齢とともに新しいこと、初めてのこと、に取り掛かる時、とてもエネルギーが要るようになったのです。
ほとんどがやってみたら予想より簡単で他の人に頼むより経済的なことが予想されていても、です。おまけに、 「達成感」付きなのに、、。
やれやれ。
家具作りを始めた若い頃、心の支えになったのはシェーカー教徒の家具とウィーン工房(1903~1932)の家具でした。
不思議なことに、今でもウィーン工房の家具や食器、テキスタイル、絵葉書などを本や展覧会のカタログで見ると元気が出てきます。
でも当時スペイン風邪の猛威でウィーン工房のつながりのある何人かの芸術家も亡くなりました。
100年後の現在、新型コロナ禍の中で私たちが翻弄されていることを思うと奇妙な循環も感じます。
感染拡大が収束していくことを願っています。